本邦に於ける資産担保証券市場概観
市場規模

日本での資産担保証券の発行は1996年に始まる。米国が1985年頃であった事から、市場として10年の開きがある。もともと日本の社債市場が米国のそれと比べて非常に未発達である事も手伝い、米国の資産担保証券の市場規模が発行残高ベースで普通社債の40%(米国での資産担保証券発行残高、73兆円)近くであるのに対して、日本のそれはわずかに3%弱(日本での資産担保証券発行残高、12千億円)に留まっている。

問題の所在

この現状に付いて日銀の諮問機関である金融法委員会は、資産の流動化が十分に浸透しない原因として、1)流動化の対象となる資産によっては、キャッシュフローをベースとして収益を考える発想が根付いていないこと、2)諸外国と比較して必要以上にプライバシーを重視する傾向があると指摘される事など、わが国固有の慣習、文化的な要因を挙げる事も可能であるとしている。

急務な必要性

銀行は日本より市場、制度等の環境が整った海外の市場でその在外資産を手始めに資産証券化を始めた。しかし、多額の不良債権処理の為に自己資本を取り崩した銀行に、BISの自己資本基準を満たさせる為、国内の貸付資産を証券化する(資産をオフバランス化し総資産自己資本比率を上げる)事が急務となった。

また、銀行の銀行としての機能が低下した環境下、ノンバンクに独自の資金調達手段を与える必要性が出てきた。リース会社が抱えるクレジットカード債権、オートローン債権等(指名債権)が特定債権として証券化される為の法整備がなされた。

特定債権としての不動産の証券化は大手不動産デベロッパーやゼネコンが保有する商業施設、オフィスビルを対象として、それらの新たな資金調達手法として定着して来ている。

安全性

日本リースの会社更生法申請にも係わらず、同社が行った6つの証券化案件はトリプルAのレーティングを維持し、資産担保証券の法的安全性を実証した。

市場形態

これまでの日本の証券化は、1)邦銀の在外資産の海外市場での証券化、2)債務者が居住者である資産の本邦内での証券化、3)債務者が居住者である資産の海外市場での証券化にまで発展して来ている。

在外資産の譲渡に対する対抗要件

債権譲渡の対抗要件として債権譲渡特例法では登記を、特債法では公告を利用する事がそれぞれ認められているが、その規定が適用されるのは債権譲渡の対抗要件の準拠法が日本法となるときに限られる。それに対して法例12条は、債権譲渡の対抗要件の準拠法は債務者の住所地法としている。従って、債務者が外国に住居を有する場合には、その住所地法である外国法が準拠法となり、その法律の定める対抗要件を具備しなければならない。

航空機リース(在外資産)の証券化

上記のように在外資産を本邦内で証券化する場合には、更なる法整備が必要となる。市場の活性化の為には、在外資産の証券化を本邦市場で行うことも有効と思われるが、現在までの証券化推進の意義が、本邦金融機関の債権流動(オフバランス)化、(不動産会社、ゼネコンを含む)ノンバンクの新たな資金調達手段の確保である事から、推進されたとしてもまだまだ先の事と言える。

航空機の場合その取引がドル建てである事も、本邦投資家(保険会社等)での引受を難しくしている。為替変動をリスクヘッジする事は可能であるが、航空機がトータルロスとなった場合等、一般債権と比較してキャッシュフローを円建てで管理するのは難しい。

本邦における証券化、今後の展開

緊急措置的に法制定、法改制した為に一部の特定債権(不動産と指名債権)しか対象にしておらず、今後の市場発展の為には更なる法整備、減税策が取られる必要性がある。